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2025年大阪・関西万博に出展を予定していたメキシコが、撤退の意向を日本側に伝えていたことが分かった。ほかにも複数の国が撤退の意向を示しているという。
「万博の華」とも呼ばれる海外パビリオンの撤退が相次げば、集客にも大打撃となる。万博は国の事業であり、大阪府・市と連携し、準備の遅れを早急に挽回する必要がある。
大阪は外国人観光客にも人気が高い。出展予定の各国、各地域が全て参加するよう、政府は対策を強化すべきである。
万博にはこれまで153カ国・地域が参加を表明し、うち56カ国は自前でパビリオンを建てる予定だ。しかし各国の予算規模と実際の工事に必要な金額が折り合わず、建設業者を確保できているのはいまだ24カ国にとどまっている。
メキシコが撤退の意向を示したのは、来年6月に予定される大統領選の影響で予算措置が不透明となったためとされるが、このままでは、撤退表明が今後相次ぐ恐れがあろう。
最大の要因は、資材の高騰や人手不足で国内の建設費が上昇していることだ。日本側はより低コストな建築方法も提示したが、各国との協議は難航し、開幕までに建設が間に合わない懸念も強まっている。
会場全体の建設費も再び上振れし、当初想定の1・9倍に当たる2350億円まで膨れ上がった。国と府市、財界で3等分するため、3分の2は公費だ。やむを得ないで済ませられる金額ではない。
「未来社会の実験場」と位置付けられる今回の万博は、金に糸目をつけない豪奢(ごうしゃ)なものを並べる場ではないはずだ。新しい技術や発想でコストを削減しながら魅力ある万博としてこそ各国から称賛され、国民の理解も得られるのではないか。
大阪府議会では25年ぶりとなる全員協議会が開かれ、建設費の上振れについて「見通しが甘い」と厳しい声が相次いだ。運営主体の博覧会協会は「増額は今回で最後となるよう取り組む」と強調したが、国が厳格にコスト管理する必要がある。
10月末の参院予算委で岸田文雄首相は「工事の遅れはマンツーマンで支援する」と述べた。万博の成否には日本への信頼がかかっていることを肝に銘じ、国を挙げて対応すべきだ。
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2023年11月14日付産経新聞【主張】を転載しています